その体と同じくらいの大きな羽根を遣って俺の目の前にやってきた。


 俺は夢を見ているのだろうか。

ああ、そうにちがいない。


 頭をふるふる振ったけど、現実は変わってくれなかった。


「ここオレの場所なんだけど!」


 不機嫌そうなこの正体不明の生物。

こんなにちっちゃいくせに、どうして大きな態度でいられるんだか、俺には謎だ。


「早く出ていけよ!」

 光を飛び散らしながら俺の周りをくるくる回り始めた。


 正直言って、かなりうざい!!


 パン!!と両手で挟むようにたたきつけた。


 これでおとなしく──…


「あぶねーな!!ハエじゃねーよ!!」

 更に怒号が耳に響く。

 ちっ。
小さく舌打ちをした。


 でもそいつも諦めたのか、俺の目線より少し上の小さな枝に腰掛けた。


「なんで人間のお前がオレのこと見えるんだよ」

 ぼやくように足をパタパタさせている。


 言葉を話したり、豊かな表情をするあたり、虫ってわけじゃなさそうだ。


 そんな時。


「ヒロー!!」