……誰のあくびだよ。

なんだか俺も同じ気持ちで笑ってしまった。



「うわ、こんなとこに久々に誰かやってきやがった」

 幼い少年のような声が聞こえる。


 口がわりぃな。


 うたたねでも始めようかというこの俺の近くで騒ぎ始めるから、少しだけイラついた。


 ……──ん?
ちょっと、待てよ?


 俺、かなり高い桜の木の上にいるんですけど。


 恐る恐る片目を押し上げる。


すると、花びらの間を縫うようにキラキラとなにかが飛び回っている。


「うわ〜、コイツ大人だ。どうりで臭いんだよな〜」

 その煌きから声が聞こえる。

思わず目を見開いて、言葉を失った。


「げ、起きやがった」


 そこには手のひらほどの小さな小さな少年。

透明の蝶のような羽根と、ピンク色のとんがった帽子が目立つ。


 それが右に行けば俺の目は右に向き、左に行ってもそうだった。

向こうもなんとなくそれに気づいたのか、さっきまでの悪態が消えている。




「……見えんの?」