秋野さんの行為が、エスカレートしてしまうことが怖かった私にとって、これは逆なでするだけなんじゃないかという、そんな不安がまだ頭から離れなかった。


そんな事をモヤモヤと考えている間に駐輪場に到着。


「ありがとう。」


自転車を降りた私。

蒼は、ニコリと微笑んでから自転車を停める。


「あれ?相原と美月ちゃん?ってか、相原自転車?」


声をかけたのは、坂下くんだった。

この状況…どう説明したらいいんだろう。


「おはよう、坂下くん」

「付き合ってるってマジだったの?!」

「うるせぇ、だったらなんだよ!」


怒ったような口調で、坂下くんに言いきる蒼。

あ…。

やっぱり昨日の話は夢じゃなかったんだ。

坂下くんの質問攻撃の的になりそうだった私は、足早に蒼のあとを追った。


「さすが、有名人カップル!」


教室前で、私たちを待ちかまえていたかのような茜に会う。


「何それ…。」


呆れる私たちに、茜はちょっと得意気に話を続ける。


「相原は、なんだか知らないけどモテるし、美月はちっちゃくて、可愛いからモテるし、そんな二人がくっついたら話題にもなるっしょ!」


なんだか知らないって…蒼の場合、見た目だけでも、充分モテる理由になると思うんだけど…。

私は全然モテないけど…。

ため息をつきながら、教室のドアに手をかける蒼。


「照れちゃってぇ~!」


何の反応も示さない私たちを冷やかし続ける茜…。

いや、あの…昨日の話聞いてました?

そう思いながら、教室のドアを開けた蒼に視線を移す。

すると、いきなり〔パァン!〕と音がして、紙テープが宙を舞う。


「「カップル誕生おめでとう~!」」


私たちの横を通り抜けて教室に入る茜。

私たち二人はその場に立ち尽くしていた。