「んじゃ、また帰り」
そう言い残し、十夜は教室に入った。
あたしの教室は隣のクラス。
中学校からずっと一緒だった教室が、
高校に入って初めて分かれた。
「紗月~っ!!」
遠くからあたしの名前を呼ぶ声が聞こえる。
きっとこれは…。
「結衣、ごめん!」
だと思った。
「全然いいけど…十夜くん、大丈夫?」
「大丈夫!気にしないで!」
「なら、よかった…。」
結衣はあたしの手を引いて、
教室の中に入った。
教室の中は、いつも通り
にぎやかな雰囲気でいっぱいだった。
放課後になった。
あたしはいつものように、
教室で十夜が来るのを待っていた。
いつもの時間。
勢い良く教室の扉が開いた。
「あれ、紗月ちゃん…?」
中に入ってきたのは、十夜じゃなくて
哲さんだった。
「て、哲さん!どうしたんですか?」
哲さんはどんどん中に入って来る。
「何もないんだけど。」
近付いてきて、隣の席に座る。
「たまたま通ったら、いたから」
哲さんはそう言って、
にっこりと微笑んだ。



