「いい?」 もう1度、 念を押すように言う哲。 「聞かなくていいのに…」 あたしは目に負けたのか、 哲よりも先に顔を近付けた。 「可愛いやつ。離したくねぇ…」 そう言うと、哲は あたしの後頭部に手を回して、 自分に引き寄せるように 力を込めた。 あたしは地面に付いていた手を、 静かに哲の背中に回した。 重なった唇が、 少しだけ冷たい。 あたし達は、少し触れただけの キスをした。 これがあたしにとって、 初めてのキスだった。