君と、恋





「哲、あたしもう大丈夫」





そう言って、哲から



身を遠ざけようとした。




…のにも関わらず




離れようとしない体。






哲の手が離れていないことを






表していた。











「好きだ、紗月」















耳元で囁かれて、





あたしは一瞬戸惑った。






哲のこの気持ちは本物で。





あたしはこれを掴めば、





きっと幸せになれる。









「哲、あたしも好き」








やっと、抱きしめ返すことができた。





想いをぶつけていこうと、




決意したこの日。







あたしは哲を好きになれた。





受け入れることができた。






ここから始める。





幸せになりたいから。











あたしを更に強く抱きしめた




哲が優しい声で言った。








「俺は幸せだ」







涙がこぼれた。





悲しいんじゃなくて。





嬉しい涙が頬を伝う。













「まだ涙止まんない?」





「哲のせいだよ、ばか」






あたしは少し哲の肩を叩いた。






「可愛いこと言うなよ」







さらりと照れる言葉を





言いのけた哲の顔を、





あたしはまだ見れないでいた。