「大丈夫だよ、紗月」 この時初めて、哲さんは あたしを【紗月】と呼んだ。 「俺は絶対離さない。大丈夫だよ」 あたしは哲さんに、 力強く抱きしめられた。 だけど、その手を 抱きしめ返すことが出来なかった。 理由は1つ。 哲さんという人間を、 十夜という男に重ね合わせて しまっていたから。 あたしは、 どうしようもない 人間にしかすぎないなと、 この時改めて思った。