「紗月ちゃん?」





「あ、すいません…」







知らないうちに、




あたしは意識が飛んでいた。







「教室まで行くよ」








その優しい笑顔は、




本当はあたしに向けられる




べきじゃないのに。





あたし、何やってんだろ…。













「ありがとうございます」







あたしも、哲さんに





笑顔を返した。







特上の最高の笑顔。





















玄関に入ると、黄色い声が聞こえる。






周りからたくさんの視線を感じた。








この視線にも慣れた。




哲さんに注がれた視線だから。








「今日も人気ですね」





横を見上げると、





哲さんはいつも通りの表情。







「もううんざりだね」







優しく見つめる瞳に吸い寄せられた。







あたしはこの人を、





真剣に愛さなきゃいけない。





こんなにもいい人、





他にいないんだから。







あたしは1人で決意をした。
















「じゃ、また連絡するね」







そう言って哲さんは、





自分の教室に戻って行った。