「哲…っ」 この温もりを抱きしめてあげたい。 抱きしめ返して、 あたしも好きだよって 言ってあげたい。 だけど。でも。 伝えたいことは、 そんなことじゃない。 「ごめん。困らせて」 「あのっ、ね」 「もういいんんだよ。好きなやつの幸せ…願うのが男の役目だからな」 そして哲は。 「じゃあな」 あたしの背中を優しく、強く押した。 「今から言うこと。聞いたら全力で走れ」 辺りが静かになる。 心臓が…痛い。 「紗月」 「……、はい、」 「愛してる」