その日の放課後。
あたしは1人、教室に残っていた。
今日はどこも部活をしてないのか、
全く声が聞こえてこない。
あたしはその中で、
十夜が来るのを待っていた。
何もするのことがないと、
やっぱり考えてしまうのは
さっきのあの光景。
一緒に歩いていた男女。
十夜と、その彼女…。
いつから?
どうして?
そんな疑問が頭の中を
ぐるぐる回っていた。
「紗月」
静かな校舎に足音を響かせて、
十夜が教室の中に入って来た。
「十夜…」
十夜はドアを閉めると、
あたしの近くまで歩み寄ってきた。
いつもと違う様子の十夜に、
あたしは少しばかりの不安を抱いた。
「帰ろっ…」
「悪ぃ。先、帰ってて」
あたしの言葉を遮って、
十夜は言葉を放った。
それは今まで言われたことのない。
冷たくて、寂しい言葉だった。
「え、1人で?」
「ごめん」
十夜は謝ることしかしてくれない。
その時だった。
あたしの手の中にあった携帯が、
バイブ音と共に鳴り響いた。
ディスプレイには、
今すぐに助けてほしい人の名前が出ていた。
「もしもし…」
あたしは十夜の前で電話に出た。



