「紗月…」 「ん?」 隠し切れてるのか。 あたしは下を向いて、 表情を隠す。 「泣いたの?」 「え、なん…」 「跡…付いてる。涙が流れた跡」 哲はあたしの目の横を、 優しく撫でた。 驚いて自分でも触ると、 確かに乾いた跡が付いている。 「おかしいな…、泣いてなんか」 「…行くか。遅くなっちゃうし」 手を引かれ、暗闇を歩く。 隣にいる哲に。 何だか違和感を感じている 自分がいた。 「でね、龍司がさ」 「え、そうなの?」 2人で笑う。 手を繋ぎながら、楽しく。 笑うんだけど。