放課後の校舎は、部活をしてる声が
少しだけ聞こえるだけだった。
辺りが静まっている中、
あたしの心臓がうるさいくらい
音を立てていた。
「今日は1人?」
哲さんが窓からグランドを
覗きながらあたしに問い掛けた。
「あ、人待ちです」
「そうなんだ」
いつもクールで、
だけどすごく優しくて。
あたしはなぜか、
哲さんに気を許していた。
「哲さんは、どうしてここに?」
「ん、俺?俺は…」
尋ねた瞬間、教室のドアがさっきよりも
勢いよく開いた。
「紗月、帰るぞ」
そこに立っていたのは、十夜だった。
「紗月ちゃん、お迎え?」
あたしは十夜に背を向け、
哲さんの方を向いた。
「そんな感じです」
「そっか。じゃ、またね」
そう言って哲さんは、
十夜のいる反対のドアから出て行った。
いなくなった瞬間、
さっきよりも心臓が
張り裂けそうだった。
「置いてくぞ」
十夜はそう言い残して、
教室の前からいなくなった。
あたしは急いで鞄を持つと、
玄関へ向かった。



