その日の夜から、後宮内には戒厳令が敷かれた。もちろん、レイの起こした騒ぎのせいである。

 
朝になっても警備兵の警戒は続いている。
 
そんな中、襲われた本人、シオがレイの部屋を訪ねてきた。

警備兵の目を盗んで遊びに来ていたヒオウと二人、ドアの向こうに立っている銀色の髪の美女を見て驚愕する。
 
そんな二人ににっこりと笑いかけるシオ。

「こんにちは。お邪魔してもよろしいかしら?」
 
初めて会った時のようなおしとやかな雰囲気でそう言う。

「あ…ああ…」
 
驚きながらも、レイは頷く。シオは頷くと、後ろに控えている数人のメイドを振り返る。

「ここでお待ちくださいね」
 
そう指示を出し、自分一人で部屋の中に入ってくる。
 
パタン、と扉を閉め、スタスタと部屋の中央まで歩いていくと、少し辺りを見回した後、大きく伸びをした。

「あー、肩こった。…ここは監視いないんだろ?」
 
がらりと態度を変えるシオに、ますます戸惑うレイとヒオウ。

「ああ、いねえよ…」

「そう、良かった。常に気取ってんのも疲れんだよね」
 
にかっ、と豪快な笑みを見せる。それでもその美しさに変わりは無いが…。