「まあ、ヒューイ様…」
 
シオは恥じらい、少し俯く。

「何、本当のことだ。お前のような妻を持てて鼻が高いよ。…これが昨日言っていた息子のレイだ。本当ならば昨日紹介出来るはずだったのだが…」

「いいえ、構いませんわ」

「すまないね、何分、まだ子供なもので」
 
その台詞に、更にカッとなる。今すぐにでも殴りかかりたい衝動を必死に堪える。

「他に用がないのなら、これで」
 
ヒューイ、シオの顔も見ずに足早にその場を立ち去る。

「それではワタシもこれで。失礼しまーす」
 
慌ててヒオウはレイの後を追う。


(くそっ、面白くねえっ!)


大股で歩きながら、途中にある造花の生けてある花瓶を蹴り上げた。
 
ガチャン、と派手に割れる音がしたが、振り向きもせずに更に歩いていく。

「ああ、ごめんなさいね、迷惑かけるわね」
 
近くにいたメイドたちにヒオウが代わりに謝っている。それも癪に障った。

「うるせえなお前! ついてくんなよ!」

「何言ってんのよ! あんたの短気で周りがどれだけ迷惑を被るか、考えなさいよ!」

「いちいち口出しすんじゃねえよ! 親父に反抗も出来ねえくせに!」
 
と、掴みかかる。