──その光景を見ていた黎は、猛然とその後を追った。
 
覚えのある会話だ。
 
この会話の後、レイはその人物と接触する。彼らの後を追いかければ、その人物に逢える! 

 

しばらく走っていくと、前方から歩いてくる二つの影にぶつかった。
 
短い白髪交じりの髪に、精悍な顔つき。がっしりとした体躯はとても六十を過ぎた男とは思えない、父ヒューイ。そして。
 
その横で銀色の長い髪を揺らし、優雅に微笑むその女性こそ──。


『──!!』
 
声にならない声を発し、黎はその女性に飛びついた。しかし、そのスラリとした美しい体は黎を受け止めることはなかった。
 
あっさりとすり抜けて、勢い余って床の上を二度程転がる。……体に痛みは無かった。しかし、胸は……心は、張り裂けそうな程痛みを持ち、悲鳴を上げていた。
 
振り返ると、その女性の美しさに目を奪われている自分と、必死に昨日のフォローを入れるヒオウの姿が映った。

『あ…』
 
もう一度、黎は女性に手を伸ばした。今度はゆっくりと。
 
光を受けているわけでもないのにキラキラと輝く銀色の髪にそっと触れた。