ハッと目を開けると、見慣れた天井が視界に飛び込んできた。
 
はあっと一息ついて、それから大きく深呼吸する。
 
額にはじんわりと汗が滲んでいた。

「…なんか、嫌な夢見た…」
 
ぼんやりとしか覚えていないが、胸に苦いものが残っている。
 
黎はしばらく天井を眺め、そしてゆっくりと起き上がった。
 
リビングに下りていくと、いつものように李苑が朝食の準備をしていた。そのうちに聖がやってきて、陽央もやってくる。 

いつものように雛を起こし、和やかな朝食が始まる。
 
朝の光が窓から差し込み、冷たいくらいだった空気を温めていく。

「おいしーねー」
 
ニコニコ笑顔で食事をする雛に、皆が笑顔で応える。
 
笑い声の絶えない食卓。
 
いつもの光景なのに…。
 
何故か黎は違和感を感じていた。
 
まだ夢の中にいるような感覚。胸の奥に残った苦いものが、徐々に体を蝕んでいくかのようだった。