彼ら──。

それは黎と陽央のことだ。先日の早乙女からの電話で、ここで話し合うべき内容は分かっていたので、聖は冷静に答える。

「何も問題はありませんよ。二人ともとても優秀ですから、もう言葉に不自由することもありません。普通に、平和に暮らしています」
 
平和、という言葉を少し強調して言ってみる。それに対し、早乙女は笑顔のままため息をついた。

「…彼らを然るべき機関に預ける気はないのですね?」

「もちろんですよ。あいつらはもう、俺の弟ですから」

きっぱりと言う聖に、早乙女は笑顔を消した。

「危険はないというのですね。しかしその保障はどこにもない。もし彼らが……」

「心配いりません」
 
更にきっぱりと言い放つ。

「これでも……人を見る目には自信があります。あいつらが悪い人間だとは思いません」
 
初めて会った時の陽央の顔は、今でも忘れない。黎を守ろうと必死な顔をしていた。片時も離れず看病をし、目覚めた後もそれは変わらず…。今の様子を見ても、二人とも互いを思いやっているのが分かる。
 
──そんな二人が、『何かの目的で』ここに来たなど、思いたくなかった。そして、本当にただ事件に巻き込まれてここに来てしまったのなら……いたずらに好奇の目に晒すものでもないと思ったのだ。

「もしそれが間違いであったら?」

「俺が責任を取ります」
 
暫く二人は睨みあっていた。