「…それでね、お父さんったら、あたしの大好きなシュークリーム、全部食べちゃうんだもん。もう絶対口聞いてやんないっ! って言っちゃった」

「あああー、乃亜にそんなこと言われたら、お父さんがっかりだよー」
 
学校へ向かう途中、そんな他愛も無い話をしながら、黎はまた幸せをかみ締めていた。
 
乃亜の表情はクルクルまわる。
 
笑っていたかと思うと怒り出し、そしてまたケラケラ笑い出す。同じ表情でいることがないので、見ていて飽きない。

「あっ、奈津子ー、おはよーっ」
 
遠くの方に友人を見つけた乃亜は、パタパタと駆けていく。
 
その後ろ姿を見守りながら、黎は思うのだった。
 
──この幸せが、いつまでも続きますように…。
 
そして、願わくば…。


あの子とずっと一緒にいられますように……と。