早く中に入って暖かいココアでも飲もう……そう思い、道路から玄関に向かって歩いていた。その時。
 
バンッ。
 
何か爆発でもしたかのような音が聞こえた。

「ん?」
 
顔を上げると、更にもう一度バンッと音がして、目の前にプラズマが散った。

「きゃっ!?」
 
更にゴウッと暴風が襲い掛かり、持っていた傘はそれに飛ばされ、乃亜も後ろにひっくり返って尻餅をついた。バシャッと道路の水がはねる。

「い…いたた……」
 
雷でも落ちたのだろうか…。おしりを押さえながら顔を上げる。
 
目の前にはもくもくと水蒸気が立ち込めていた。

「…何これえ…」
 
深い霧で辺りが何も見えない。しかし、それは強い風があっという間に押し流してしまった。すぐに視界が開けてくる。
 
そこで乃亜が見たもの。
 
──少年が、立っていた。
 
暗雲から降りしきる雨に打たれて、少年は微動だにすることなく、佇んでいた。
 
乃亜はしばらく道路に座ったまま少年を見つめていたが、良く見るともう一人、少年の足元に人が倒れているのが分かった。

「……」