「ほんと? …うみ? うみある?」

「うみ? ああ、海? 海もないわ。こんな大きな水源、リトゥナには存在しなかった」

「ほんとー?」
 
乃亜は目を丸くする。

「海って、この川より大きいの?」
 
レイが質問すると、乃亜は大きく頷いた。

「おおきい、おおきい、おーおきい!」
 
両手をいっぱいいっぱいに広げ、乃亜は説明した。…その説明では良くわからないが…。

「うみ、いこう。あー、あついなったら」

「え、海って暑かったり寒かったりするの?」

「…たぶん気温のことでしょう。ここは一年を通して気温差があるようだから」
 
横からヒオウがそう説明してくれた。

「ふうん…。いいね、暑くなったら海に行こう」
 
乃亜に向かって微笑むと、彼女は何度も頷いてくれた。
 
そんな乃亜を見て、心が穏やかになっていくのを感じるレイ。
 
リハビリをしている間も、毎日のように顔を見せに来てくれて、片言の言葉で励ましてくれて…。何度この笑顔に助けられたことだろう…。