眼下には大きな川が流れていた。

悠々とした流れの中、そこから生まれた風が丘を駆け上がり、レイに水の香りを届ける。

「…これが、川…」
 
隣でヒオウはあっけに取られてその景色を見ていた。

「川? 水の流れる場所…」
 
レイも呟く。
 
川面が太陽の光を受けてキラキラと輝くのが眩しい。少し目を細めて、その流れを観察する。

流れの早い場所、緩やかな場所。

流れの側には白く見える石の河原。それに沿って生い茂る木々と、緑が映える土手。

青い空を見上げると、点のように見えていた何羽かの鳥が徐々に近づいてきて、滑るように水の中に着水した。

こういう景色を見たのは初めてなような気がする…。何となくそう思った。
 

食い入るように川を見つめる二人に、乃亜は満足そうに微笑む。

「すごい? きもちいい?」

「あ、うん…」
 
レイは応える。

「…みる、はじめて?」
 
その乃亜の質問には、ヒオウが答えた。

「ええ、リトゥナにはなかったわ」