「…誰の言葉?」

「…さあね。誰だったかしら」
 
遥か遠くに思いを馳せながら、穏やかにそう言った時。
 
手術室の扉が再び開いた。
 
黎と陽央は勢い良く立ち上がり、出てきた医師に飛び掛った。

「李苑ちゃんの……姉の容態は!?」
 
掴みかかられた医師は少し驚きながらも、笑顔で応えてくれた。

「ええ、大丈夫です。赤ちゃんも、無事に生まれましたよ」

「っ、本当ですか!」

「はい。今、櫻井先生が……お兄さんが付き添われてますから」

「あ……ありがとうございました!」
 
陽央は床に頭が着くくらい、思い切り頭を下げた。
 
黎は大きく息を吐いた後、同じように深々と頭を下げた……。