NOAH

「義務ならあるでしょう?」

陽央は穏やかに言う。

「アタシ達を助けてくれた乃亜や聖くん達、そして、ここに導いてくれたノアとアンタのお母さんの為に……ね」

「……『NOAH』は座標を指定していなかった。ここに来たのは偶然だ」

「必然よ」

きっぱりと陽央は言い放つ。

「でなきゃ、こんなにも幸せな環境にはいないわ。やっぱり、ノアが導いてくれたのよ。黎に幸せになって欲しいから」

「…思い込みだろ」

項垂れながらそう言う黎の顔に、僅かに笑みが浮かぶ。それを横目で見て、陽央にも笑顔が浮かんだ。

「いいのよ、変わっても。人の心は、変わっていくものなんだって。だから……幸せになって、いいのよ」