NOAH

『黎くん……生きて』


李苑が言った言葉が頭を過ぎる。


「俺は…」
 
ノアは一緒に死のうと…。

「……」
 
あの時。
 
ノアがヒューイの放った銃弾に倒れた時。
 
彼女は本当に何も言葉を発しなかったのか? 
 
必死に口を開けて、何かを言っていた。その言葉は、本当に聞こえなかったのか?


『レイ……生きて』


「──」
 
息を呑んだ。
 
ノアの声ははっきりと……この耳に残っている。


『いつまで〝ノア〟から逃げるつもりだ』


(…そういう…ことか…)
 
過去の出来事を受け入れず、現実さえも拒否して、そして自分の存在さえも消してしまおうとした。
 
大切な言葉から。
 
大切な人から。
 
全てから目を逸らして。
 
けれど。

「俺には……ここで生きていく権利なんかない……」