黎が倒れてから一週間──。
 
外傷はほとんどなく、念のために精密検査もしたが何の異常も見られなかった。しかし、一向に彼が目覚める気配は見られない。


「聖さん、どうしよう、このまま黎が起きなかったら…」
 
乃亜は毎日毎日、眠り続ける黎を見ては泣きそうな顔でそう訊いてきた。

「大丈夫、じきに目を覚ますよ」
 
聖や李苑は、その度に優しい笑顔で励ますのであった。実際は、彼らにもこれからどうなるのか予想できなかったけれど…。

 
陽央から全てを聞いてから、聖はまず早乙女に連絡を取った。「彼らの潔白が明らかになった」と。
 
地球の危機を救おうとしてくれていた彼らは危険ではないと、報せたのだ。
 
そして、乃亜にも全てが報された。
 
陽央が話している途中から号泣し、時々「大丈夫?」と声をかけられながら、最後まで、きちんと話を聞いた。
 
その後しばらく黙った後。

「そっか…。うん、分かった…。良く、分かった…」
 
泣きながらも、何故か納得した様子だった。

「何が、分かったの?」
 
陽央は訊いた。
 
すると、肩を竦めながら、こう言ったのだ。

「黎が見ていたのは私じゃなかったんだよね」
 
その言葉に、陽央はハッとしたのだった。

以前、黎が乃亜に告白したいけれど出来ない、と悩んでいた。確かにそれは、潜在的に残るノアへの強い想いからなのだと思った。

「…でもね、乃亜…」

「あ~あ、私、黎のこと好きだったのに…」
 
陽央の言葉を遮り、今にも泣きそうな笑顔で乃亜は吐き出すように言った。