ＮＯＡＨ

歩きながら『足音』を確認する。
　
トランシーバーを手に取り、近くにいる部下に命令を下す。

「通風孔に鼠が入り込んでいる。始末しろ」
　
そして更に足を速めた。急いだ方がいい。余計な邪魔が入る前に、“新世界”へと飛び出すのだ…。


　
身をかがめて狭い通風孔の中を突き進んでいたヒオウは、タラリと汗を流した。

「まずい、見つかった」
　
極力音を出さないように歩いていたので、気付かれないと思っていたが……甘かった。

「あのジジイ、サイボーグなんじゃないの？」
　
なんて言いながら、焦燥感が襲ってくる。どうすれば…。

「ヒオウ！」
　
仲間の一人が声を上げる。後方から煙が物凄い勢いで迫ってきた。

「燻り出す気ね」
　
ヒオウは急いで前に進む。しかし、前方からも煙が迫ってきた。

「……」
　
仲間達は無言で視線を交わすと、ヒオウに防護マスクを渡した。

「俺たちは劣りになる。ヒオウは先に進んでくれ」

「で、でも…」

「頼んだぞ」
　
ポン、と肩を叩いて、四人が次々に下へ降りていく。
　
ここで迷っている暇は無い。皆が敵を引きつけている間に、ヒオウは前へ進まなければならない……。




レイとノアは、銃をを持った者達に囲まれていた。
　
目の前に転移盤があるというのに、一歩でも動けば撃たれてしまう。

（くそっ…！）
　
ノアの胸からは今もドクドクと血が流れ出ている。一刻を争うというのに…！