NOAH

一方、ヒオウは──。

壁に身を預け、ハンドガンを持った手をダラリと地面に投げた。

激しい銃撃戦のため、体は傷だらけで息も上がっていた。苦しいけれど……それが自分はまだ生きていると認識させてくれる。
 
良く、銃弾を受けずに生き残れたものだ…。銃に関しては素人も同然なのに。
 
辺りはしん、と静まり返っていた。
 
砂埃が風に舞って、青い空が黄色に隠れてしまう。
 
ヒオウの周りには何人もの人々が地面に倒れていた。

スラムの仲間達、ドームからの刺客、ごちゃ混ぜになって折り重なっている。

最後に起こった爆発により、吹き飛ばされた人達だ。──ヒオウは、これを何とか逃れていた。

「アタシって運がいいのね。これも日頃の行いがいいおかげね」
 
なんて呟き──。
 
死者達にそっと手を合わせた。

「ヒオウ! ああ、良かった、生きてたね!」
 
ガランガランと瓦礫を乗り越え、ターラがやってくる。

「ターラ! 良かった、貴女も無事だったのね」

「ああ。…酷いね、ここは…」
 
ターラは仲間達の躯に、しばらく祈りを捧げる。

「一息ついてる時間はないよ。これでヒューイが退くとは思えないからね。次が来る前に態勢を立て直さないと」

「そうね。子供達は無事かしら?」

「多分ね。一旦戻ろう」

「うん」

二人は急いで、子供達や病人の待つ住居地へと向かう。