NOAH

『レイのせいじゃない』
 
硝子越しなので、声がくぐもって聞こえる。

『…こんな格好、見せたくなかったな、と思って…』

その言葉に、顔が歪む。

『ほら。泣くだろ、レイは…』

「だって、俺のせいでっ…」

『あんたのせいじゃない。…あたしの、弱さだから…』
 
あの時、レイを突き放していれば恐らくこんなことにはならなかった。それが出来なかったのは自分の弱さだと、ノアは思っている。

『大丈夫だよ。あたしは、大丈夫』

「あんた……どこまで強いんだよ……」

(それとも、弱い俺がそうさせてんのか)
 
護るどころか護られて。助けるどころか助けられている。本当に情けない。思わず苦笑してしまった。
 
硝子越しに両手を重ね合わせて。
 
コツン、と額を合わせた。少しでも互いの体温を感じたくて…。

『レイこそ、その足大丈夫か? あいつらにやられたのか?』

「ああ…。でも痛み止め効いてるから…。ゆっくりなら歩けるよ」

『そっか。…ちゃんと寝てる?』

「うん、そっちは?」

『寝てるよ。大丈夫』

「そっか…。…逢いたかった」

『…うん、逢いたかった』

「すげえ、逢いたかった」

『うん…』
 
額を硝子につけたまま、穏やかな顔で語り合う二人。