NOAH

部屋を見渡していると、奥にある扉が開いて、銀の髪の女性が、大男によって中に投げ込まれた。

「ノア!」
 
すぐに近寄ろうとしたが、部屋は透明な硝子で仕切られており、ノアの下へは行けなかった。
 
ノアは、暫く項垂れていた。
 
美しかった髪はボサボサになり、身につけているものもボロボロで、白い肌が露になっている。その白い肌には……紫色の痣が、いくつもつけられていた。
 
どんなに酷い目に遭ったのだろう…。
 
それを思うだけで涙が出た。

「ノア…」
 
そっと名を呼ぶと、それに反応するかのようにノアがゆっくり顔を上げた。
 
レイの顔を目にしたノアは、パッと顔を背けた。
 
そうだろう…。自分のせいでこんな目に遭って…。憎まれているに違いない…。レイはそう思った。

「…ごめん、ノア…」
 
硝子の壁に手をつき、謝る。

「俺の、せいで……こんな……」
 
涙が溢れてきて言葉が続かない。
 
なんて情けないんだろう。愛しい者を助けられないどころか、謝る事も出来ないなんて。情けなくて、更に涙が零れた。


コツン、と硝子を叩く音がして、顔を上げる。
 
そこには、優しい笑顔でこちらを見ているノアがいた。