ヒオウは、ドームの外を目指していた。

いつもの正規ルートはノアがいなければ通れないと思い、スラムの人々に教えてもらった隠れルートを通っていった。

下水道を通るので匂いはキツイし汚いが、見張りがいないので好都合だ。

 
そうして外に出て、鬼のような形相で、大股に歩きながらある人物を探した。

「ターラ!」
 
例により植物園にいた小太りの女性の名を呼ぶ。

「おや、ヒオウ、この間はどうしたんだい? 皆楽しみに待っていたのに…」
 
言いながら、彼の表情がいつもと大分違う事に気付いた。

「…何かあったのかい?」

「リップルはどこ!?」

「えっ? リップルかい?」
 
藪から棒に言われ、少し面食らうターラ。
 
リップルとは、レイやヒオウが出産に立ち会ったトモの夫である。その人を、ヒオウは探していた。

「今の時間だと……見回りから帰って、トモと息子のところにいると思うけど…」

「そう」
 
それを聞いたヒオウは、夫婦の住居である部屋へと向かった。異変を感じたターラは、ヒオウの後を追った。

 
入り口にかけてある布を思い切りめくり、部屋の中に入る。リップル、そして子供を抱いていたトモが顔を上げた。

「やあ、ヒオウ、どうし…」
 
リップルが話し終わらないうちに、ヒオウは勢い良く彼の胸倉を掴んだ。

「あんた! あんたが……レイとノアを……!」
 
激しい憎悪の目で睨みつける。

「一体どうしたってんだい!」
 
ターラが止めに入り、トモも何かを訴えるような瞳でヒオウを見た。