三日後。
 
レイは不眠のまま作業を続けていた。しん、と静まり返った部屋の中、カタカタカタとキーボードを叩く音だけが響く。
 
カタ…。
 
音が止んだ。
 
研究員がそれに気付き、レイの顔を覗き込む。同時に、レイの体は椅子から転げ落ち、そのまま床で動かなくなった。

「…眠ったようだ。少し熱もあるようだ。抗生剤の用意を」
 
レイの様子を診た医師がそう指示を出し、何人かの手を借りて、部屋の隅にある簡易ベッドにレイを放り投げた。
 
その横で、研究員達がモニターと、窓の外の『NOAH』の様子を眺めた。

「まだ終わってはいないな」

「そのようだ」
 
淡々と会話が成される中、レイはしばし眠りにつく。


  
夢の中では、自分の隣で穏やかに笑うノアがいて。生き生きとした植物に囲まれて、幸せそうに笑っていた。

こんな風に、ただ、隣に居てくれるだけでいい。

ただ、笑顔を見せてくれればいい。
 
多くは望まない。

ただ、ノアがいてくれれば……。

 
そんな願望が見せる、短く儚い夢──。