ふわり、ふわりとまるで水の中を漂っているような心地よい空間の中にレイはいた。
 
柔らかく、暖かい……まるで母体の中で眠る赤子のような安らぎを感じる。

『…レイ』
 
自分を呼ぶ声が聞こえる。

『レイ』
 
声は更に大きくなった。
 
この心地よいまどろみにいつまでも浸っていたかったが……そのまま眠ることを許さぬかのように、名を呼ぶ声はどんどん大きくなる。


レイは、面倒臭そうに重い瞼を開けた。

 
そこは白い空間だった。
 
ぼうっとする頭で、しばらくその白い空間を眺める。
 
そうしていると、カチャッと音がして、人が近づいてくる気配がした。
 
目だけを動かして気配のする方を見ると、黄色い色がパッと目についた。しかし目が霞んで、それが何なのかまでは分からない。
 
黄色い色だけを目で追っていると、軽やかな歌が聞こえてきた。
 
かわいらしい優しい声で、それを耳に入れるのはとても心地良い。しばらくその優しい声に耳を傾ける。
 
そうしていると、目が次第に周りの景色を映し出してきた。