NOAH

「これが?」
 
一体、これは何だ? 
 
それに、母の研究していたもう一つのものとは?
 
色んな疑問を頭の中で並べながら、恐る恐る円盤の中に足を踏み入れた。

「母さんが研究してたことって、何なんだ? 緑を広げる研究の他に、機械でも開発してたのか?」
 
 
研究員達は、ジッとレイを見守った。
 
──何も起こらない。
 
彼らの期待していたことは、何も起こらなかった。そこへ、やってきたのは。


「当たらずも遠からずだな」

 
その声に、レイは勢い良く振り返った。
 
ヒューイだ。
 
今最も顔を見たくない相手の登場に、体中が怒りに震えるのを感じた。

「何であんたがここに…」

「いては悪いかね? ここは愛しい妻の研究所だ」

「──っ」
 
レイは殴りたい衝動をグッと堪えた。
   
「これはディージェの最も大切にしていたものだ。お前に譲ろうと思ってね」

「…それはどうも」
 
両手に握りこぶしを作り必死に怒りを抑えるレイを、白髪混じりの顎鬚を撫で、不敵な笑みを浮かべながら眺めるヒューイ。