聖は暴れるその人を力ずくで抑えた。

「ごめん、何言ってるか分からなくて怖いだろうけど、あの子を助けるためだ!」

「──!!!」
 
中性的な人物は、やはり性別の分からない高くも低くもない声で喚いた。

「ごめんなさい、チクッとしますよー」
 
注射器を構えた李苑は、素早くその人物に針を刺し、十秒足らずで採血は終了した。

「行き先変更だ。医大じゃなく……紫乃原医療センターに」
 
そこには、聖の最も信頼する医師がいた。その医師ならば、この少年を助けてくれる…。“誰にも内緒で”。
 
この少年達を、他に渡してはならない──。聖は本能的にそう感じていたのだった。

「がんばれよ、絶対、助けてやるからな…!」
 
出血多量でショック症状を起こしかけている少年の手を力強く握り、励ました…。