その瞬間、飛び込んできたもの。
 
白い首筋にくっきりと残る、赤い印…。
 
レイの目線の先にあるものに気付いたノアは、さり気なく首に手をやり、レイから隠した。

「早く帰りな。また見つかったら大変だぞ」
 
背を向け、そう言う声は…。心なしか、震えていた。

「帰れるかよ…。だって、泣いてたんだろ?」

「泣いてないって」

「嘘だ」

「本当だよ」

「嘘だ!」

「ホントだって」

「ノア!」
 
強く名前を呼ぶと、ノアはキッとレイを睨んだ。

「その名前で呼ぶな!」

大きな声に少し驚く。それに気付き、ノアは小さく首を横に振る。

「…ごめん。ここでは、その名前は呼ぶなって言っただろ? ここでは……シオだ」

「…何故?」
 
シオとノア。
 
二つの名前に拘る理由は?
 
ノアは俯き加減に、銀の髪を夜風に揺らしながら答えた。