NOAH

あんな風に強くいられたら…。
 
そう、思う。

 
徐に立ち上がると、一息ついて、外へと走り出した。
 
今日中にもう一度ノアに会って、礼を言いたかった。

 
監視に引っかからないルートで、ノアの部屋を目指す。

(もう寝てるかな…)
 
遅い時間だったため、それも考えられた。その時は明日にするか…。

そんなことを考えながら壁をよじ登り、ノアの部屋のバルコニーの上に出た。
 
飛び降りようとすると、下のバルコニーにノアの姿を発見した。手摺りに両手を置き、暗い外を眺めている。

「ノア」
 
小声で名を呼んでから、レイはバルコニーに飛び降りる。

「レイ!?」
 
ノアは振り返り、降りてきたレイに驚く。

「あんた、こんな時間に何して…」
 
そう言いながら、ノアは手の甲で頬を拭う。
 
拭いきれなかった涙が、部屋明かりに反射して煌いた。

(え…?)
 
ドキッとした。

「…泣いてた…のか?」

「違う違う、欠伸しただけ」
 
ノアはヒラヒラと手を振った。

「そんな…」

「さあ、もう子供は寝る時間だよ、帰った、帰った」

「ノア!」
 
子供扱いされて少しムッとし、部屋に戻ろうとするノアの手を掴んで引き寄せた。