ＮＯＡＨ

話を聞き終えたノアは、大きく嘆息した。

「馬鹿だなあ…。そんなん、信じるなって」
　
ポンポン、と頭を叩かれる。

「あんたのお母さんは、あたしにはこう言ってた。自分には息子が一人いる。会うことは出来ないけれど、遠くから見守ってるんだって。本当は今すぐにでも会いに行って、この手に抱きしめたいってさ」
　
ノアの言葉が信じられず、顔を強張らせたままでいると、ふわりと包み込まれた。

「こんな風にね…。抱きしめたかったって」

「……」
　
包み込まれた暖かさに、強張っていた顔も、身体も、みるみる解かされていく気がした。

「大丈夫、あんたは愛されてた。ただ、直接じゃないから伝わらなかったんだね…」

「…本当に…？」

「ああ」
　
　
不思議なもので、今までの苛立ちは嘘のように消えていた。
　
まだそれを信じきれたわけではない。もしかしたらノアの嘘かもしれない。それでも、優しい言葉はレイを救ってくれた…。


　
自室に帰り、今日の出来事を反芻する。
　
自分はまだまだ子供なんだなと思うのと同時に、いつも毅然とし、道を開いてくれるノアに感謝の念を抱いた。