「おや、またここにいたのかい」
 
声をかけてきたのはターラ。ノアの叔母であり、この植物園の管理者だ。

「ああ…」
 
植物の隙間から見える青空から視線を逸らさずに、返事をする。

「落ち着くだろう? あんたのお母さんの場所だからねえ」
 
ターラはそう言いながら、野菜の収穫を始める。
 
サクサクと音がするので、レイはそちらに目をやった。

「それは……ここの? ドームの?」

「これはあたし達の分。ドームへは来週運ぶからね」
 
手を休めることなく、ターラは大きな葉を摘んでいく。

「…手伝う」
 
レイは起き上がり、ターラに習って葉を摘んだ。
 
「嬉しいねえ…。博士の息子とこうして肩を並べてここにいれるなんて」
 
ターラは本当に嬉しそうに顔を綻ばせる。
 
それはターラばかりではない。ここの人々は皆、レイに良くしてくれた。それは偉大なる母のおかげと、最初は嫌だったけれど…。
 
今は、素直に嬉しいと感じる事が出来る。