「ヒオウも待ってるし、行くぞ」
 
ポン、とレイの背中を叩き、シオは歩き出す。

「あ、そういえば…」
 
レイはある疑問を思い出す。

「ここではシオ、『ノア』って呼ばれてるだろう? 何で?」

「あ? ああ……まあ、ノアが本名なんだ」
 
シオは少し言葉を濁す。

「ふーん…。何で偽名使ってんの?」

「まあ…。色々あってな」
 
あまり答えたくないようだったので、それ以上追求はしなかった。ただ、こう言った。

「俺が『ノア』って呼ぶのは駄目?」
 
その言葉に、シオは振り返る。

「んー…。まあ、ここでならいいよ。ドーム内では『シオ』な」

「分かった」
 
理由は分からないけれど、レイはそれを了承した。



ここには、真実がある。
 
まだ知らないことがたくさん眠っている。
 
それを知っていくことで、道が開けるような気がした。
 
自分のこれから進むべき道。唯一の母親との接点。父親の本当の姿。そして、シオのことも…。