「俺さ、分かっちゃったんだよねぇ」
「分かった?」
「見たの、あの時。奥様の――」
瞬間、ランタンが落ちて割れた。
その後に、重く鈍い音。
ばたりとも、どしりとも聞こえる。ああ、全校集会で貧血でいきなり倒れた奴の音だと、変なことを思い出した。
さておき。
「さと、う……さ、ん……」
恐る恐る、仰向けに倒れていた佐藤に声をかけた。
仰向けになっているのも、僕に振り返った瞬間にこうなったんだ。
――おかしな騙し絵でも見ているみたいだ。
こんな時に限って、月が地上を照らす。
額からどひゅどひゅと血が溢れる佐藤を。
「――」
走った。
全速力で。
今来た道を戻る。


