アイゼンハイムからの招待状



(三)


昼と違って、夜の山は寒気がたつほど気味悪かった。


星がまばらにあるものの、月は濃い雲に隠れていて辺りは暗い。


僕らの明かりとなっていたのは、佐藤が持つランタンだった。


懐中電灯なんてあの屋敷にはないらしく、ランタンが灯りとはどれだけ粋な計らいなんだか。


僕の手には果物ナイフとランタンの火が消えた時ようにチャッカマン。


ケータイはポケットに装備してあり、佐藤の少し後ろを歩いていた。


館の明かりが過ぎ去りしあたり。


「まさか、奥様がなぁ」


下らなさそうに佐藤は言う。


「まあ、旦那捨てて逃避行しようとしていたぐらいだから、天罰でもくだったかな」


「……やけに詳しいですね」


「これでも結構、長い間、手紙のやり取りしてっから。アイゼンハイムが私を迎えに来てくれるの、とかノリノリだったぜ。館捨ててまで行くともほざいてたし」