「“ブルー・ブルー”とかさ。奥様、手紙で言ってたぜぇ、手癖のわるい夫とか。風呂入っているときも盗むらしいぞ」
内側の南京錠はそのためにしていたんだろう。平野さんも特に否定せず、聞いている。
「それよか、俺。喉乾いたんだけど。ビールくれない」
「あんた、よく言ってられるわね」
「怒んなよ。喉は乾くのは普通なんだからさ。おばちゃん、持ってきて」
こいつは、よりにもよってあんこさんに頼むのか。
「では、私が……」
「いいえ、あんた、私が行きますぅ……」
行くという平野さんを止めて、あんこさんが重い腰をあげる。
涙は枯れたか、しわしわの顔がやつれて見えた。
「何かしてた方が気が紛れますからぁ……」
「あんこさんだけじゃ危ないです。僕もいきます」
「いえ、すぐそこですからぁ」
「ダメです」


