(二)
それは前触れないことだった。
「か、可憐のとこに行っていいかい」
そう出流さんが言ってきたのは。
「危ないですよ、出流さん。ここにいてください」
僕の言うことに出流さんは首を振る。
「妻のとこに……いたいんだ……」
制止を聞かずに出流さんが行こうとする。
「なら、僕も」
ついていこうとすれば、止められた。
「妻と二人っきりにしてくれないか……」
「でも」
「察してくれ……」
「なら、くれぐれも現場に触れないように。警察がくるまでそのままでいてください」
今も小鳥遊さんは真っ赤な浴槽にいる。僕が証拠保持のために動かすなと言ったからそのままだった。
頷いて、広間から出ていく出流さんを見送る。
「ぜってーあいつ、宝石とか盗むつもりだぜ」
足を開いた生意気そうな態度で語る。


