そうですかと聞いたあと、雫がちょっと待ってと言った。
「そーちゃんの部屋の前の手紙は?あれは平野さんに食卓の間に案内される時にはなかったよ」
雫にしてはいい点に気付いたものだ。
「みんなで夕食中に、小鳥遊さんかもしくは“誰か”が置いたのかもしれない」
「誰かって……」
「そのままの意味だよ。死体は見つからなければ、そのままだ。密室殺人も誰かに見つからなければ成立しないもの。あの手紙は、小鳥遊さんが書いたものかもしれないけど、いち早く僕たちに知らせるために置いた“招待状”なのかもしれない」
悪夢への招待状だ。
ただ、その招待状のおかげで。
「なら、この中に犯人はいないよね。全員、あの時、食卓の間にいたんだから」


