「サン・ピエトロ……?」
喋ったのは雫だ。僕に聞いたようだけど、この場所(世界)に呑まれる僕は答えてやれない。
「サン・ピエトロとはヴァチカンにある大聖堂のことでございます。見たことはありませんか?ヴァチカンのシンボルと言われる、あの建造物を」
「あ、教科書でなら」
「左様で。その大聖堂にあやかり、名を借りたのですよ。奥様――この洋館の主、小鳥遊可憐(たかなし・かれん)様はキリスト教に大変なるご興味がありまして。
館内の至る所にキリスト教関連のもの、例えば、絵画などが飾られておりますので後でご覧になると良いでしょう」
優しく説明するジェントルマンに雫はたじたじだった。
僕はしどろもどろ。場違いなんじゃないのかと本気で心配になってきた。


