(四)
肺がパンク寸前だった。
今なら長距離マラソン選手とひけを取らないと豪語できるし、痛みで頭が焦げそうだ。
「そーちゃん!そーちゃん!」
「はは……まじで安心する」
雫の泣き顔を見ると本当にそんな気分になった。
いや、死んじゃやだっ。とか縁起でもないことを言うが、責められない。だって僕はそれに見合う格好をしているのだから。
血だらけ。
しかして、この血は。
「だいじょう、ぶ。僕の血じゃ、ない」
擦った手のひら血とか、膝あたり、ズボンに染み込む血は本物だが、それ以外は他人のだった。
僕のセリフを聞いたことで、ある顔が浮かんだろう。
「佐藤は……どないしたん」
想像であってほしいという、みんなの声の代表者に――首を振った。


