「ようやくできたのか…」

その白い服を着た、赤黒い髪の長い奴が、あたしの体を隅々みて言った。

「……にしても、よくできているな…」

そいつは顎に手をあてたまま言う。
こいつが発する音は、さっきのうるさかった奴とはかなり違っていたので、あたしは大人しくした。

「機械の調子はいいようだな」床に散らばった赤い液体を見ながらそいつは言う「少々やりすぎのようだがな…」

そいつはまた顔をあたしに向ける。

「しかしなんだ、女の体をこんなにじっくり見ていては、俺も変態呼ばわりされるからな……MA-073、この服でも着ていろ」

そいつは羽織っていた服を脱ぎ、あたしに押しつけた。
あたしが腕を通すと、袖が赤く染まった。
……あ、そっか、さっきあたしが潰した奴が垂れ流した体液の色か……
あたしは、つんとした顔でそれを見た。

「お前の名前は、『MA-073』と言う。その自分の口でも言ってみなさい」

そいつは、優しくあたしの唇に指をあてて言った。
エムエー?
なんだ、それは…

「どうした?声が出ないのか?」

あたしは不思議に思いながらも、一度深呼吸をして、キョトンとした顔で口を開いた。

「エム…エー…ノ、マルナナ、サン」

そいつはあたしがしゃべると小さく微笑み、また口を開く。

「俺はアキラ。よろしくな、073」

アキラと名乗った者は、あたしに手を差し出した。
あたしはとまどいながらそれに応える。
アキラの手は、暖かだった。