「そんな頃、サクちゃんの実家
 から思わぬ仕送りがあって
 ライブが成功したお祝いに
 そのお金を持って、一件の
 居酒屋に入ったんだ」

「居酒屋?」
 
樹は、深く頷いた。

「そう、セイゲツ・・・」
  
「・・・・私の家、えっ?」

杏は今、大興奮の中にいた。

その場所で樹は初めて、雅也と
店を手伝っていた百合に会った
事を伝えた。

「じゃあ、お父さんと
 ユリちゃんは、モーメントの
 メンバーと知り合いなの?」

「親父さんは、やせ細った俺達
 の姿を見て、店の、のれんを
 外して、無料で店にある
 ありったけの食べ物を
 食べさせてくれたんだ
   
 その後も、俺達の夢の話に
 共感してくれて、毎日
 飯を食べさせてくれたよ」

「お父さんが・・・」