居酒屋が営業している
時間なので、家族に会う事は
全く心配していなかったが

お店の常連さんや知人に会う
と雅也に状況がやや大げさに
筒抜けになりやっかいなので

誰にも会う事の無いようにと
願いながら、樹が来るのを
待っていた。

杏は、百合に瑠璃子とご飯を
食べに行くとメールを送り

その後すぐ、瑠璃子に樹と
今から食事に行く事をメール
で伝えた。

《帰ったら、メールします
 家族には、ルリと
 一緒にいるって言ってるの
 ・・・アン》

そこへ、この間とは違う色の
高級車が停車し窓が開き
樹の声がする。

「杏ちゃん、ごめん
 車が混んでて、少し遅れた
 さぁ、乗って」

樹は運転席から助手席へ
身を乗り出し、腕を伸ばして
ドアを開けた。
 
杏が助手席に座り、樹の方を
こっそり見つめていると
彼は、その視線に気づき
杏を真っ直ぐに見つめ優しく
一度だけ微笑み、その後
彼の視線は前だけを見つめ
車は、走り出す。