雑貨店でアルバイトをしている
杏は、ポケットの中、携帯電話
の着信音の振動に気がつく。

「店長、ちょっとすみません」

店内はちょうど今、お客様が
途絶えたところで誰もいない。

杏は、店長に挨拶をした後に
持ち場を離れ、裏手にまわり
非通知番号からの電話に
戸惑いながらも出てみた。

「もしもし・・・・」

「もしもし、杏ちゃん
 野瀬だけど」

そう、その電話の相手は
樹だった。

「ノセって・・・
 イツキ」

二人は今夜19時に、あの川辺で
会う約束を交わした。

電話を切った後の、杏の心拍数
はどんどん、上がっていく・・
    
「アンちゃん、お店、お願い」

「すみません、今行きます」

その夜、約束どおりに家から
少し離れた川辺で、杏は
樹を待っていた。